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カトリック福岡教区訪問 報告



福岡教区で行われたカリタス ジャパン後援行事に参加し、福岡教区を訪れた報告の一部をご紹介します。

社会福祉法人カトリック社会事業協会 聖小崎ホーム

  • 養護施設の現状について

     北九州市6カ所の養護施設の一つである聖小崎ホーム(以後、ホームと略す)は、児童定員60名(幼児から高校生まで)という施設です。

    「何が一番困っているか」の質問に考える間もなく「職員定数が少ないこと」と答えられました。厚生労働省は、児童養護施設の職員数は施設の最低基準(厚生省令)を、子供6人に職員1人と定めています。実際は宿直や公休がある交代勤務なので、3交代なら3倍の18人を職員1人で担当しなければなりません。週末や春・夏・冬休みなどは特に大変であるとのことでした。自治体の裁量によって、補助職員を置くための予算が組まれますが、障害者施設、高齢者施設に比べて、「子どもは票にならない」という風向きが強く、予算が組まれにくいことが指摘されました。

     また、「職員のストレスマネージメント」についてもあげられました。愛情を受けずに育った子どもたちは情緒が不安定でキレやすい場合もあります。身体的な手出しはもちろん、言葉においても暴力と見なされることのないように対処しなくてはなりません。心身ともに働きのハードな職員の心のケアという側面からも、月に1回神父訪問があり、講話と職員の分かち合いが行われています。

    北九州市養護相談理由別処理件数の構成割合
     
    2001年度
    2006年度
    虐待
    302
    408
    家庭環境
    98
    286
    疾病
    96
    82
    家出
    24
    38
    死亡
    12
    11
    離婚
    7
    3
    その他
    86
    110


     養護施設に入ってくる子どもたちの多くは、ネグレクト(保護者や養育者が必要な世話を怠ること)、経済的貧困による虐待だそうです。北九州市養護相談理由別処理件数の構成割合をみても、この5年間でネグレクトの割合が急増していることがわかります。

  • カトリック教会、信徒、地域との関わり
     ホームでは、様々なボランティアかたや行事を通して地域の方々との関わりをもっています。子どもたちに英語、国語、数学などを教える学習ボランティアのかたや散髪ボランティアのかたがホームを訪れています。また、1日里親として里親家庭とのふれあいを大切にする家庭体験は20組にも及び、子どもたちは正月などを近隣の一般家庭で過ごしています。

     その他、餅つき、海水浴、遠足、クリスマス会を通して、友達や北九州市内の教会のかたたちと交流を行っています。子どもたちは年2回の路上生活者への炊き出し(北九州ホームレス支援機構)に参加し、小倉で200食あまりを準備し配布しています。

     また、折に触れ、神父様のお話を聞くこと、ボリビアでの支援活動をしているかたのお話を聞く機会がもうけられ、ホーム卒業生たちとの交流会などを行っています。
  • 訪れて

     施設の先生がたは、日々起こる学校からの呼び出しにも対応し、子どもたちの親となって接していらっしゃいます。ある時、職員のかたが学校へ行くと「施設の先生がたは、ご連絡するとすぐに来てくれるから安心です。」と言われたそうです。最近は、様々な家庭の事情からか、学校から呼び出しの電話をしても、不在でコンタクトがとれない家庭が多いということでした。 「毎日大変ですね。」と話すと、「大変は大変ですが、苦しいことばかりでもないんです。」とのこと。

     クリスマス会では、学校の友達を呼んで教室いっぱいになること、ボリビアの支援活動の話の中で「ボリビアでは100円で40個のパンが買える」という話を聞いて、日本の状況に置き換えてボリビアの子どもたちのことを心配する子どもの様子、中学校での学力テストの1、2位をホームの子どもたちが取り、他のホームの子どもたちの啓発となり、みなが競い合うように勉強し始め、中学生の子どものほとんどが100番以内の成績になったなど、ここにはあげきれないほどの心温まるお話を伺いました。

    子育てできない母親が増え、子どもを抱けない親が増えているといいます。コミュニケーションが希薄な現代だからこそ、地域や近隣住民とのネットワークによって、次代を担う子どもたちを支えていける地域でありたいと考えます。また、養護施設の内外の状況は大きく変化しましたが、職員数の基準は1976年の制定時から変わっていません。職員が足りないほど施設の入所者が多くなることは、何を物語っているのでしょう。現代社会が忘れてきたものをもう一度振り返り、今に生かせていければと心から思いました。


*** 聖小崎ホーム新施設長 井手義孝さんからのメッセージ ***
 昭和21年、戦後の混乱期に、旧八幡市天神町教会の神父様が、一人の戦災孤児を預かったことに端を発し、現在までの60年の間に800余名の子どもたちが、聖小崎ホームから家族のもとに、或いは社会へと巣立っていきました。

 ところが近年、当ホームでも入所理由のトップはご多分に漏れず虐待であり、そのうちの大半がネグレクトです。


 このように児童養護施設では虐待された子どもや、発達障害のある子どもたちの入所が増え、子育てに悩む親が増加し、子育て機能が低下している中で、子どもたちの人権を守り、健やかな成長を支援すること、また、心的課題を抱えている子どもたちへの個別的な関わりや、治療的なケアを行うことが大きな役割になってきています。しかし、そのケアと対応に苦慮し、混乱を来しているのが現状です。

 こうした中、学習ボランティア、散髪ボランティア、朗読ボランティア、或いは物品の寄付、芸術鑑賞やスポーツ観戦招待等々、多くの方々のご厚意に支えられていることを感謝しています。

 十分に親の愛情を受けることが出来なかった子どもたちを受容し、他人を思いやる心や優しさを育み、希薄になっている感謝の心を、日々の体験を通して育てていきたいと願っています。

 社会や親の無関心、無知、無責任な言動によって子どもたちの心や生活がゆがめられている中、キリストに出会った喜びやキリストに信頼して生きることの意味を、毎日の生活の中で伝えていくことができるように祈り、また、私たちの喜びと希望を持った生き方が、神様の喜びとなりますようにと願いながら、これからも歩んでいきたいと思っています。

聖小崎ホーム 井手義孝

 


熊本クリスチャンボランティアセンター

  • 活動内容
     熊本クリスチャンボランティアセンター(以後、センターと略す:事務局は手取教会構内)は、1994年に設立されました。設立目的は、「必要としている人々との関わりを深め、キリストの愛を実践できる機会を提供し、社会・福祉に関わるボランティア活動を支援すること」です。

     設立時には、多くのボランティアグループができ、各病院や施設に定期的に会員が訪問していました。ボランティアグループの活動としては、手話、点訳、聖歌隊による施設訪問、鑑別所訪問等でした。2004年に新たに「つなぐ手サポート」として、サポートを必要としている人とサポーターを結ぶ活動を行い始めましたが、様々な事情により2006年に見直しが行われました。

      2006年より、毎月1回の定例会議によって、「つなぐ手サポート」を必要としているかたとの分かち合いの場を発展させる試みを行っています。今後は、社会福祉に関わるボランティア団体との幅広い連携を深め、特に青少年の健全な育成のために、教会学校や教会青年などとの協働を目指しています。その取組みの第1歩として、交通安全の看板を作成し、熊本市交通安全協会へ寄贈、設置する活動をスタートしています。今後の活動としては、青少年育成の活動支援と、熊本ホームレス自立支援の会との連携強化を念頭に、活動を継続する予定です。
  • 取材を終えて

     偶然にも訪問した日に、熊本地区信徒使徒職協議会総会が行われていました。テーマは『キリストの共同体を考える』で、参加型プログラムのもと自由な発想を持ってともに考えるという形での話し合いでした。高齢化、財政難、信仰の伝達、教会の管理など教会存続のための直接的な課題を考えていくことが問われている時に、福音の具現化を考えることは後回しになりがちなのが現実です。

     熊本市内の教会、小教区には「福祉部」または「社会奉仕部」はありませんが、社会奉仕活動を教会の枠を超え地区での取組みとして検討しています。センターの活動もその一端であり、2003年から今現在まで活動している信徒協社会参加部の路上生活者への自立支援「熊本ホームレス自立支援の会」もその一つです。支援の会設立のきっかけは、3人の信徒の「不自由なことはないか?私たちに何かできることはないか?」という路上生活者への語りかけであったといいます。月に1回、各小教区で作ったおにぎりや汁物を手取教会に運び、そこから河川敷にいる50名ほどの路上生活者に手渡しし、交流を行っています。

      活動の輪は一般市民にも拡大し、夜回り、教会での交流会や旅行、結核検診への受診の促しと保健所への送迎、自立支援のための役所との交渉、アパート探し、仕事紹介のほか、行政との意見交換も行っているのが現状です。周辺住民との関係修復は特に難しい問題であるといいます。特筆すべきは、同会が熊本市の廃棄物処理条例の改正案(資源ごみ持ち去り禁止条例)に反対するパブリックコメントを提出したことです。あいつぐ資源ゴミの盗難は、路上生活者が行ったものではありません。夜間の収集や騒音被害という苦情に対して、支援者の立場から対策を講じた上で、路上生活者の生存権を確保し、自立の道を閉ざされてしまわないよう動いています。

     また、今回、センターの事務局長宮津美光さんのお話から、人との積極的な関わり、連帯のすばらしさを感じました。一例をあげさせていただけば、知的障害者のお子さんの通学(期間限定)のサポートがあります。事情により、通学途中の3キロほどの道のりを一人で歩かせることができないのでどうしたら良いかという相談がセンターにありました。相談者がセンター事務所に訪れ、どのように解決していくかを分かち合いました。結果的に、相談者の近くの近隣教会へ出向き、信徒のかたや地域の保健福祉センターのかたがたと話し合い、お子さんを家まで送り届けるサポートを行うことになりました。

     「悩んでいるけれどどうしたら良いかわからない」、「困っていても相談する所がない」という人たちの話や声を聞き、ともに考え、解決していこうとする、相談者に寄り添う姿勢は、「ともにあるキリスト」の姿勢にほかなりません。

      また、宮津さんご自身は、子どもの非行防止と自立支援を行うNPO法人を立ち上げ活動していらっしゃいます。暴走族やシンナー乱用の子どもたちと積極的にふれあい、ともに生活し自立へ導いています。地域のかたの車を1台500円で洗うという「ましゃくにあわん仕事」(熊本弁。割りにあわない仕事の意)を通して、就職活動を支援し、自立を促すという活動や、教会での手作り結婚式のボランティアで、若者の結婚式をサポートする活動を行っています。

     ボランティア活動は一人でもできますが、カトリック教会として連帯し、地域に根付いた活動を行うことは大変意味があると感じます。カトリック教会の姿勢は不変のもので、福音の通り、様々な状況下で虐げられている人や追いやられている人の側にあるものです。 また虐げられる人を作り出さない社会を構築していく姿勢、つまり人権尊重と命の尊厳の尊重こそが根幹であり、キリスト者の使命であるとも言えるでしょう。「福音を生きる」・・私たち一人ひとりのキリスト者としてのあり方をともに考えていけたらと思います。

(報告:カリタスジャパン事務局 喜代永 文子)

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