We are Caritas No. 10

We are Caritas は年3回(2月、6月、12月)発行しています。
ご希望のかたは事務局までお知らせください。(無料)

国際カリタスキャンペーンへの招き

わたしたちの人生は、すべて旅路にあります。それは、時の流れを人生の終わりに向かって歩み続ける旅であり、また具体的に他の場所へと移動をする旅でもあります。時にその旅路は喜びや希望のうちにあり、また悲しみや不安の中で続けられる旅もあります。そのどこにあっても、どのような状況でも、神の似姿である人間のいのちの尊厳は、常に守られなくてはなりません。

現代社会にあっては様々な理由から、生まれ故郷を離れ、見知らぬ地へと移り住む人が少なくありません。また地域の紛争によっていのちが脅かされ、安全のために移り住むことを余儀なくされる人たちも大勢おられます。

神における一つの体として生きるわたしたちは、困難に直面する兄弟姉妹を見捨てることはできません。その一方で、異なるものを排除することで安心を得ようとする社会の傾向は強まっており、人間のいのちの尊厳が危機にさらされる事態も相次いでいます。
「誰一人として排除されたり、存在を無視されたりしてもよい人はいない」と強調する教皇フランシスコの呼びかけに応え、カリタスジャパンと日本カトリック難民移住移動者委員会は手を携え、国際カリタスに協力しながら、国内において「排除ZEROキャンペーン~国籍をこえて人びとが出会うために~」を始めます。同じ旅するものとして、困難に直面する兄弟姉妹と出会い、学び、行動することができますように、多くの方の参加を期待します。

菊地 功司教(カリタスジャパン責任司教)
松浦悟郎司教(日本カトリック難民移住移動者委員会委員長)

 

国際カリタスは、「移住者・難民」をテーマとするキャンペーンを立ち上げました

現代の世界において、「移住者・難民」に影響を受けていない国は皆無と言っても過言ではなく、「移住者・難民」は世界的な議論の中心となっています。そのような中、社会はより閉鎖的になり、不寛容や嫌がらせが横行しています。しかしながら、この問題の根源である「深刻な人権侵害」については、ほとんど言及されることがありません。

国際カリタスはこのキャンペーンで、移住者・難民に関わる全てのコミュニティ(彼らの出身国、通過国、受け入れ国)において、「出会いの文化」を育むことを目指します。

キャンペーンを通して国際カリタスは、今なぜこのように多くの人々が故郷を離れなければならないのかを理解し、難民や移住者との結びつきを深めていくよう皆さんに働きかけたいと思っています。
そもそも教会は、移住者や難民に対する神のもてなしを実践するよう招かれています。私たちが難民や移住者に心を開く時、それはキリストを歓迎しているのだということを思い出しましょう。

ルイス・アントニオ・タグレ枢機卿(国際カリタス総裁)

排除ゼロキャンペーン~国籍をこえて人びとが出会うために~

カリタスジャパンは、国際カリタスからの呼びかけに応え、国内において、日本カトリック難民移住移動者委員会と共同でキャンペーンを実施します。

私たちはみな寄留者である
私たちは国籍を越えて人々がともに生きる社会を実現するため、社会に広く働きかけ、教会が、外国人移住者の置かれている現状を知り、理解し、具体的な行動を起こしていくように促します。

キャンペーンを通じて・・・

  1. 出会う 教会内で外国人移住者と出会い、彼らの声を聴き、互いに対話する「出会いの場」を増やします。
  2. 知る/学ぶ 外国人移住者の置かれている状況やその背景を知り、理解を深めるための機会を提供します。
  3. 行動する 関係各所のネットワークを通じて、政策提言に関わっていきます。また、グローバルレベルでの連携による問題解決のために、日本国内の現状や情報を伝えていきます。

 

日本の移住者・難民の状況

日本では、戦争前後の時代から日本に在住する在日コリアンの人々を中心に、1980年代はじめには80万人の外国籍者が暮らしていました。1980年代後半からは、アジアや中南米諸国などから日本に働きにくる労働者や、国際結婚のために定住する人々が増加しました。

2017年現在の統計では、日本の在留外国人数は230万人を超え、外国人労働者数も100万人を超えています。また国際結婚などで生まれる子どもたちの数も増え、現在では、日本で生まれる30人に一人が外国にルーツをもつ子どもたちになっています。このように、日本社会はすでに多民族多文化の社会になっているのです。

しかし一方で、日本に移住し定住する外国人は、長い間日本人と同等の権利を保障されず、社会の中でも差別や人権侵害にさらされてきました。使い捨て労働力として雇用の調整弁にされる移住労働者、地域や家庭の中で孤立し、差別やドメスティックバイオレンス(DV)などの被害に苦しむ移住女性、収容され退去強制の恐怖におびえる非正規滞在の外国人、学校や社会から疎外されいじめに苦しむ外国にルーツをもつ子どもたちなど、様々な問題がおきています。

また、日本に庇護を求める人の数も、2010年代に入り急増しています。2010年はじめには年間およそ1,000人だった難民申請者の数は、昨年2016年には10,000人を超えました。一方で難民認定された人の数は、28人(2016年度)にすぎません。日本政府が難民受け入れに消極的な中、多くの庇護希望者がこの日本で、いまも不安といのちの危険にさらされているのです。

山岸素子(日本カトリック難民移住移動者委員会委員)

 

世界の現状

国境を越えた移住者数は、過去15年間に約41%増加し、世界で2億4400万人(IOM2015調査データ)以上といわれています。「雇用不足による経済的困窮」「他国への憧れ」「紛争や政治的圧力」など移住にいたる理由は様々ですが、これらの移住者(庇護を求める難民含む)が直面している課題は深刻化しています。

例えば、カリタスミャンマーによる2016年の調査データによると、ミャンマーからの移住者の多くは仕事を求めて他国へ渡る若年層であり、カリタスジャパンがパートナー事業として関わっている7地域内の移住労働者のうち46%は移住先での工場勤務、19%が家政婦、そして9%の若者がKTV(カラオケボックスの略で、カラオケバーでの接待業)と呼ばれる接客業に従事し、それらの多くが人身売買に巻き込まれるリスクの高い環境下で働いています。また、同国全体の統計では、人身売買に巻き込まれたケースのうち71%が「地元で先の希望が見いだせず、リスクの高い移住労働に追い込まれた」ことが立証されています。

特にアジア諸国においては、移住者の権利を守るための体制が極端に弱いため、「送り出し国と受け入れ国が連携したネットワークによる対策」への取り組みが不可欠です。

もう一つの動向としては、気候変動の影響で移住せざるを得ない人々(自然災害被災者など)が増加している点も近年の特徴です。

 

あなたの町の「カリタスさん」(キャンペーン編)

2019年までの「排除ZEROキャンペーン」期間中、各地の教会の多国籍コミュニティや外国人コミュニティを紹介します。

札幌の「英語ミサ」コミュニティ

札幌教区カテドラルの英語ミサを支えているのは、キーボード担当のパトリックさんとギターのメルバートさんを中心とする多国籍の聖歌隊です。留学生も多く、歌の練習はミサの前後だけですが、新しい顔ぶれを見つけると気軽に声をかけ、SNSを駆使して各自で練習できるようにしています。

二人は音楽だけでなく、多国籍の教会の在り方についても積極的に日本人信徒と一緒に取り組み、活動しています。それは、観光客や短期滞在者など「お客さん」としてではなく、地域住民として自分が通う教会と関わって生きていきたいから。

同じ世代の日本人にも、もっと教会に来てほしいと願っています。そのためには今、どのような教会の在り方が求められているのだろうかと彼らは言います。心に安らぎを与える彼らの歌声が一人でも多くの人に届きますように。