We Are Caritas No.17(2019年12月号)ができました。
We are Caritas は年3回(2月、6月、12月)発行しています。
ご希望のかたは事務局までお知らせください。(無料)
巻頭言
「キャンペーン」が取れて、排除ゼロ運動は本格化する!
2017年9月に教皇フランシスコの呼びかけで始まった排除ZEROキャンペーンは今年の12月で終了します。しかし、終了するのは「キャンペーン」であって、排除ゼロの取り組みはまさにこれからが本番に入るのです。キャンペーンというのは、ある時期に集中的に伝えたいことを知らせ、意識化させるためにありますが、それが日常の「あり方」になり、「文化」になっていくことを目的としています。
排除には、段階があります。はじめは、「邪魔」なので排除する動きから始まります。その段階では、意識して排除していくので多少の痛みもあり、言い訳も考えられていきます。そのうちに、排除していることが無意識のうちになされるようになり、ついには完全に視野に入らなくなります。教皇の言葉を借りると、排除された人たちが単なる「風景」になっていき(その時点ではまだ見えている)、そのうちに「廃棄物」として自分の意識の中からも消していくのです。そうなると、目の前にあっても無意識に避けて通るという、まったく見えていない状態になってしまうのです。大切なことは、どの段階にあっても、再び見えるようになりたいという意思をもって歩んでいるかどうかです。
このキャンペーンの最終的目標は、排除を無くすだけではありません。その向こうにある「出会いと交わり」、そしてすべての人が大切にされる「ともに生きることのできる世界」を目指しているのです。私たちは、排除ゼロのために「出会い」という道を通ってきましたが、その道を歩むこと自体が、たとえ完成していなくても「すでにそこに実現し始めている」ことでもあります。
キャンペーンが終わった今こそ、新しいスタートなのです。さあ、“Share the Journey(ともに旅をしよう)!”
松浦 悟郎司教(日本カトリック難民移住移動者委員会 委員長)
山野内倫昭司教(日本カトリック難民移住者委員会 担当司教)
菊地 功司教(カリタスジャパン 責任司教)
新・街頭募金箱が完成しました!
全く新しい街頭募金箱を作成しました!段ボール折り畳み式で、ご自身で自由にデコレーションもできます。チャリティーコンサートやバザー、街頭募金、教会の窓口などで是非ご活用ください。
リレー写真展
排除ZEROキャンペーンリレー写真展は、キャンペーンの三つの柱である「出会う・知る/学ぶ・行動する」のうちの「知る/学ぶ」の目的で実施しました。
2018年12月より2019年9月までの10カ月間で、16全教区、40の都道府県にある小教区、施設、学校等様々な場所、計142会場で開催することができました。
リレー写真展を開催して
このリレー写真展を通して、日本にいるとなかなかわからない世界の状況が、たくさんの写真を通して伝わってきました。難民の方々の今の生活状況もよくわかり、やはり写真の力は大きいと感じます。「難民」と大きくまとめられているけれど、どのような環境にあるかはそれぞれ異なり、必要な支援もそれぞれ違うのだということも改めて感じました。
今回の写真展は、主に中学・高校生を対象として行いましたが、彼女たちが今の自分の生活状況とは大きく異なる生活があることを知ることができたことは大きな学びだったと思います。自分より小さな子どもたちでも自分自身で厚い壁を乗り越えていることに気付いたり、今自分にできることを考え実行したいと決意したりする様子がうかがえました。この写真展を行うことによって、それ以後学校内で難民について意識することが多くなったことも感じます。若い世代の人たちが「知る」ことによって行動が変わっていく姿が見られたことに大きな意義を感じた写真展でした。
清泉女学院中学高等学校 藤田智栄子(ちえこ)
排除ZEROキャンペーンリレー写真展を振り返り、改めて教会の現状を痛感しました。写真展そのものは多くの人々の理解と協力で終えることができましたが、元々関心の薄い人たちへの拡がりは不十分だったと思います。準備から実施の中で、教会活動に熱心といわれている人の排除の姿勢に直面した反面、他国籍夫婦の「私たちが体験したつらさを経験する人が少なくなるように」との願いに言葉が詰まったこともありました。遠い国で起きていることには同情しても、身近な所で自分たちが排除の当事者になっていないだろうかと振り返る機会にすることが不十分だったと悔やむこともあります。私自身は排除のない社会の実現に向けた活動を続けていきます。
名古屋教区カリタス福祉委員会 見平(みひら)隆
排除ZEROキャンペーンの写真展を行うにあたり、私自身もどのような写真展を那覇教区で行うべきか悩みました。ただ貼り出すだけでは意味がなく、ポスターなどでお知らせしようかと考えました。しかし教会の皆さんもカリタスジャパンの目的をもっと学ぶ必要があり、私自身も担当者としてこのプログラムに関して理解が必要だと思いました。このキャンペーンはたくさんの方に呼びかけ、協力して頂きました。会場教会の主任司祭にも感謝しています。写真を見た人が写真に写る人々の痛みを意識し、祈りと行動によって動いたと思いました。排除ZEROキャンペーンリレー写真展によって那覇教区ではカリタスジャパンの働きが信者さんたちにより近くに感じられたと思います。
カリタスジャパン那覇教区担当者 マーシー・クリストバル
リレー写真展を通して行った授業
中学1年生は「排除ZEROキャンペーン」と連動して、「世界の今を知っていますか?」というテーマで宗教の授業を行いました。
まず1日の行動を振り返りながら、「当たり前に思っていること」を話し合い、続いてそれは本当に世界のどこでも「当たり前」なのかと考えました。写真展を見たり、様々なデータを見ながら、水道の蛇口をひねるときれいな水が出ること、これは本当に「当たり前」と言えるのか、3人に1人が安全な水が飲めないとはクラスの割合にすると…と身近な数字に置き換えたり、もし安全な水がなかったら…などを想像したりしました。生徒たちは世界の現状に驚きつつも、「持っている人が少しずつ分けてあげたらいいのに」、「この分け合おうと思う気持ちが大切だね」と、写真展が伝えるメッセージに真剣に耳を傾け、今自分ができることを真剣に考えていました。この学びが次の学びへと繋がり、将来を担う生徒たちがよりよい世界を構築してくれることを願っています。
湘南白百合学園中学・高等学校 宗教科 山田 千夏子(ちかこ)
リレー写真展を終えて
写真展をお引き受けしたものの、小学校低学年がどのくらい理解できるか気になっていました。しかし、展示を始めると、低学年は担任の説明を聞きながら、写真から訴えるものをしっかり受け止めているようで、どの学年の子どもたちも写真を食い入るように見ていました。上級生は説明も読みながら、今この世界に生きている友だちがこんな状況にいることを知り、自分たちはどのように関わっていたらよいのか子どもたちなりに考えるきっかけのひとつになったように思います。また、総合学習でカリタスについて取り組んでいる高校生が見学にきてくれたり、キリスト教講座に来校されるお母様方にも見ていただいたりすることができました。6年生のある児童は、何度も写真を見に訪れ、お小遣いを募金していき、来月までこの募金があるなら来月お小遣いでまた協力したいと話してくれました。きっとこの写真が自分たちも何かしなくてはという思いにさせてくれたのだと思います。良い機会を与えてくださったことに感謝いたします。
横浜雙葉小学校 久保田 龍平
写真展に寄せていただいたコメント
写真展に寄せていただいたコメント(感想、お祈り)は、約1400通にものぼり、小学生から第二次世界大戦を体験された方まで幅広い年代から、日本語、英語、タガログ語、ベトナム語など様々な言語で寄せられ、本当に大勢の方が見てくださったことを感じながら、カリタスジャパン関係者で読ませていただきました。その中には「写真の中の苦しんでいる人々の気持ちを自分のことのように感じて書かれた感想」「本当に長い間、世界の様々な地域で難民が生まれ続けていることに無力感を覚えるといった感想」「難民の現実を知ったけれども、どう行動してよいのかわからないという焦燥感」「自分の身近でも難民が生まれる種がまかれているのではないかという危機感」「自分の身近にいる外国から来た方との接し方を見直してみよう、話しかけてみようという自分の気持ち、意思を書かれたもの」また、写真では取り上げられなかった日本の現状(受け入れが極端に少ない難民政策、人権がないがしろにされている入国者収容所での様子など)についての声が多く寄せられました。
排除ZEROキャンペーンは2019年12月で終了しますが、多くの方々が感じたように、移住者・難民の現状はすぐには変わりません。このキャンペーンを「始まり」として、同じ写真を見た私たちのリレーが、それぞれにできることを行動で表しながら更に先へと繋がって、ともに進んでいければと思います。
難民・移住者に関するアンケート
排除ZEROキャンペーンの取り組みの三つの柱の最後「行動する」を目的として、2019年4月から6月にかけ、全教会で、難民・移住者に関するアンケートを実施しました。アンケートは2種類あり、(1)教会の現状(外国語ミサの実施状況など)、(2)教会における外国籍の人々にかかわる現状と課題、についてでした。
排除ZEROキャンペーンアンケートから見えてきたこと
このたびのアンケートにご協力くださった教会のみなさん、ありがとうございます。半分以上の教会から回答をいただいたことは、教会の多国籍化が急速に進み、さまざまな課題に直面しているしるしであると考えられます。
とくに近年急激に増加したベトナム人の方々に対する対応に苦慮されている状況が表れています。技能実習生や留学生のベトナム人が急に全国各地の教会に訪れてこられ、言葉も通じない、ベトナム語のテキストもない、という状況のなかで、それでも何とか教会の仲間として受け入れようという努力をされている姿が伺われます。これらの教会をサポートするための対応が急務といえるでしょう。また、都市部と地方の格差の問題も明らかになってきました。外国語のできる司祭・修道者が集中し、外国人をサポートするセンターも設置されている都市部と、そうでない地方では外国人への対応に大きな差があるのは言うまでもありません。都市部・地方をカバーするネットワークの構築が必要です。
一方、都市部では教会に来られた外国人への対応を近くのセンターや外国語ミサを行っている教会に丸投げしてしまう傾向もあります。それに対し、近くに外国語ミサを行っている教会がない地方の教会では、自分たちで何とかしなければなりません。そのための工夫や努力が回答のなかにも見られました。工夫の中で目立ったのは「まず声をかける」ということでした。教会の多国籍化は「教会とは何か」を考える機会でもあるといえるでしょう。
柳本 昭神父(日本カトリック難民移住移動者委員会 秘書)
National Youth Gathering 2019 -Share the Journey-
2019年11月17日(日)、東京大司教区の国際青年グループが「TICYG(Tokyo International Catholic Youth Gathering)」を、「排除ZERO」をテーマに「National Youth Gathering」として、カリタスジャパン、日本カトリック難民移住移動者委員会との共催で行いました。会場となった東京大司教区関口会館ケルンホールには約150名の多国籍の青年が集まりました。
催しは、山野内司教の「日本は特別な時を迎えています。新しい日本を作るために日本の若者の友人になってください」という言葉で始まり、午前はグループ毎に選んだ「排除ZERO」に関するミッションチャレンジを会場の外に出て行った後、ラテンアメリカ、ベトナム、フィリピン、日本のグループから提供された昼食を囲みました。
午後のパネルディスカッションでは、菊地大司教の進行で、二人の青年から自身の体験や思いが発表されました。最後に各グループがミッションチャレンジで感じたことを発表し、「日常生活でも恐れないで挑戦し、経験を分かち合おう!」と今日のチャレンジをまとめ、大聖堂で菊地大司教司式によるミサを捧げて終了しました。
あなたの町の「カリタスさん」(キャンペーン編)
今回のあなたの町のカリタスさんは清泉女子大学です。清泉女子大学にはボランティアラーニングセンターやカトリックセンターが設けられています。カリタスジャパンは、両センターの協力を得て、排除ZEROキャンペーン写真展(昨年と今年の2回)、難民に関する勉強会などを開催することができました。今回は、とくに関連行事に関わって下さった二つのグループについて、それぞれのグループ代表者のかたに紹介いただきます。
◎Seoグループ
私たちは清泉女子大学のボランティアラーニングセンターと共に活動している学生スタッフSeoグループです。グループ名であるSeoとは、Support each other, Smile each otherの略です。フェアトレード、品川地域連携プロジェクト、花壇プロジェクト、募金活動、エコキャップ、Action for Refugee(難民を支援する活動)などの係があり、学生一人ひとりがいくつかの係に所属をして、特に携わりたいことを中心に分担してボランティア活動をしています。
Seoでは月に1度、大学内のカフェでフェアトレードの東ティモール産コーヒーとスリランカ産紅茶を販売しています。また、品川区の地域連携によって生まれた、上記のコーヒーを使用したオリジナルクッキー(しながわ観光協会「しながわみやげ」認定)も販売しています。
◎イブラ・ワ・ハイト清泉ガールズ
イブラ・ワ・ハイトはアラビア語で「針と糸」を意味します。シリア紛争の中で、生活基盤のほぼ全てを失った女性たちに「針と糸」で収入の道を開くプロジェクトです。私たちは、本部に届くシリア人女性たちが作った刺繍をお預かりし、女子大生という視点から様々な商品に独自に加工したうえで、学園祭やガーデンパーティーで販売しています。シリア人女性に対して一方的な支援をするのではなく、パートナーとして彼女たちと私たちとが対等な立場で一緒に歩んでいくことをモットーとし、独自に勉強会も開催しています。
イブラ・ワ・ハイト清泉ガールズでは、届いた製品をヘアゴムやティッシュケース、バネポーチ、トートバッグなどに加工して販売しています。“支援”ということに捉われず、「かわいい」「欲しい」と思っていただけるような商品を作ることを心がけています。