We are Caritas は年3回(2月、6月、12月)発行しています。
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排除のない神の国を目指して
昨年の9月から、カリタスジャパンと日本カトリック難民移住移動者委員会は共同で「排除ZERO(ゼロ)キャンペーン」を行っています。教皇フランシスコの呼びかけに応え、排除のない社会を目指すための取り組みです。
いま、日本の社会は排除のない社会でしょうか? 国は福祉制度の充実をはかり、外国人のための取り組みも進めていますが、一方で、自国で命の危険にさらされている人々の難民認定を拒否し、技能実習生という名目で安価な労働力を確保しています。また個人レベルでも、ヘイトスピーチやインターネットにおける中傷、偏見や差別によって多くの人々が傷つき、苦しんでいます。
イエスの処遇について、大祭司カイアファは「一人の人間が民の代わりに死ぬのは好都合だと考えないのか」と発言しました。これは国民の利益を守るために誰かを「排除」する考え方です。人々はその考えに賛成し、イエスは十字架に架けられました。しかし、それに対する神の答えはイエスの復活でした。つまり、誰かを「排除してはならない」というものでした。
教会が目指している「神の国」も、言い換えれば「排除のない社会」であるといえるでしょう。イエスの復活に込められた神の思いに応え、排除されようとしている人々の叫びに耳を傾けることが求められています。
柳本 昭神父(日本カトリック難民移住移動者委員会秘書)表紙挿絵とも
四旬節×排除ZEROキャンペーン 叫び特集
昨年9月27日に「排除ZEROキャンペーン」が始まってから最初の「四旬節」を迎え、今回は、日本カトリック難民移住移動者委員会の関係団体(教区別支援センターや難民支援団体のネットワーク)の皆様にもご協力いただき、日本に住む外国籍の方々の「叫び」を特集しました。私たちの身近な隣人の「叫び」に皆で真摯に向き合いましょう。また、カリタスジャパンが支援先の国で聴いた、移住労働経験者の「叫び」にも耳を傾けてください。
仮放免者の叫び 生きる権利を求めて
入国管理局は2017年10月から、仮放免者(在留資格のない状態で、収容を解かれている人)のほぼ全員に対し「就労を禁止する」という条件を付けるようになりました。そして、違反が発覚した場合、仮放免許可を取消し、収容施設に収容するという大変厳しい運用を行うようになっています。
「働かないでどうやって生きてゆくの?」「働いていることがばれて再収容されることを考えると眠れない」。そんな悲痛な叫びは、日に日に大きくなっています。
仮放免者の中には、30年近く日本に滞在している人、子どもが日本の中学校、高等学校、大学、大学院に通っており日本語しかできない家族、祖国で受けた迫害が原因のPTSD(心的外傷後ストレス障害)で治療を続けている難民申請者がいます。
家族を養うため月8万円程度の就労をしたことを理由に仮放免を取り消され、再収容された男性が「人間が、人間らしく尊厳を持って生きてゆく権利=生存権」を求めて訴えを起こしています。
長期被収容者の叫び 犯罪者のように
長崎には長期収容型の大村入国管理センターがあり、現在100名以上の外国人が収容されています。ほとんどが関東や関西から移送されてきた人々です。
10月に移送されてきた男性は、犯罪者のように暗い護送車に揺られ、高速道路サービスエリアでトイレのみが許され一日かけて大村に着き、疲れ切っていました。難民認定申請中の彼は、これまで仮放免を8回申請してきましたが全く許可がおりません。「妻が面会に来てくれていたのがせめてもの慰めであったのに、会いに来るにも遠すぎる長崎までどうして移送されなければならないのか」と訴えます。
技能実習生として渡日するも、劣悪な就労環境のため逃亡した後、身柄を確保され収容を余儀なくされた人もいます。「技能実習生になるために祖国で借金して来て、職場で危険を感じて逃げただけ。未だに還付金(社会保険の脱退一時金など)ももらえていない状況なのに、入管は、早く自分の国に帰った方がいいという」。
近年、各地の入管収容所で全くと言っていいほど仮放免許可がおりず、また非人道的な強制送還の回数も増えてきた中で聞こえてくる被収容者たちの叫びです。
アフリカ人女性難民申請者の叫び 「明日がきたらもう目覚めない方がいい」
日本に逃れてきた難民の中には、家がない、その日食べるものがない、病院での治療費が払えないといった困窮状況に置かれる人も少なくありません。
2008年に来日したアフリカ人女性は、裁判で勝訴し、2016年にやっと難民として認められました。8年もの間、彼女は就労の許可がないため仕事について自立することもできず、健康保険にも加入できず、日本に在留する資格や住民票などもない中で、先の見えない生活を強いられていました。
公的な生活支援金(保護費)も裁判中は受給できず、「明日、朝がきたら、もう目覚めない方がいい」と言って支援団体に連絡をしてきたこともありました。
難民申請者の叫び 家族の身を案じながら、ゼロから生きる
単身で来日したある男性は、難民としては認められませんでしたが、半年で人道的な配慮から在留特別許可を受けました。安心したのも束の間、同時にそれまで受給していた保護費が停止され、公的な定住支援もありません。家族をいち早く呼び寄せたいと思っていましたが、民間のシェルターで暮らしていた彼は、自立するための住居も仕事もすぐにはみつかりませんでした。普段は自分の思いや感情を一切表に出さない人でしたが、子どもの話をする時だけは柔らかい表情になり、家族を思う強い気持ちが伝わってくるようでした。
その後、困窮者支援事業(カリタスジャパンも一部支援)を通じて、一時的な生活費を支援することができ、現在は、奥さん、娘さんたちとともに日本で暮らしています。
このように、政策が実態に追いついておらず、難民の最低限度の安全と生活が確保できない状況が生まれています。
ある技術実習生の叫び 「わたしも人間です」
技能実習生として来日したカンボジア人のNさんは、建設業の会社で働きました。建設現場での仕事はたいへん厳しく、休憩時間もほとんどありませんでした。十分な安全教育がないままに水道管の埋め立て工事をさせられ、人差し指を切断するほどの大きな怪我を負いましたが、会社は労災手続きもとりませんでした。そして2カ月の入院を経て仕事に復帰したNさんは、日本人の同僚や上司から「仕事できない」「国に帰れ」と怒鳴りつけられ、さらに「カンボジア人あほう」「日本にもどってくるな」などのひどい暴言や、殴る蹴るの暴行をうけるようになりました。Nさんのヘルメットは、ハンマーで殴られたために、ひびが入ってしまいました。
食べられず夜も眠れなくなり追い詰められたNさんは、日本に来ていたお姉さんのもとに逃げ、労働組合に助けを求めました。病院を受診し「うつ病」と診断されました。労働組合に加入してたたかい、Nさんの指の切断事故およびうつ病は「労災」との認定を得ることができました。
「日本に来る前、日本はよい国だと思っていた。でも本当に酷かった。日本に来る前にたくさんのお金を払ったので、もっと仕事がしたかった。でも、うつ病で働けなくなってしまった。わたしも人間です。人間として同じに扱ってほしい」
技能実習制度とは 技能実習制度は、「開発途上地域等への技能・技術・知識の移転による国際協力」を 目的としています。しかし、実態としては、人手不足の中小零細企業を中心に 労働力を確保する手段となっています。この建前と実態の乖離から様々な矛盾が 生まれ、多くの人権侵害が指摘されています。 1993年に始まった技能実習制度は、それまでの「研修」に接木される形で スタートし、2010年には在留資格「技能実習」が創設され、労働法が全面的に 適用されました。それでも問題解決に向かわなかったため、16年に、特定の 在留資格に対する単独立法としては初めて技能実習法が制定されました。 技能実習での在留者数は、11年末の141,994人から17年6月末には251,721人 (77.3%増)と急増しています。技能実習法の制定に伴い、一定の規制強化が 図られましたが、他方で大幅な受入れ拡充策も導入されており、問題の拡大が 懸念されます。厚生労働省からも、「残業手当の時間単価が実習1年目は300円、 2年目は400円、3年目は450円」「繁忙期の人手不足で、1か月最長130時間程度の 違法な時間外労働」などが報告されています。このほか、技能実習生の意思に 反する強制帰国、劣悪な居住環境、送出し機関への手数料等の高額な支払い、 性的暴行など、人権侵害は深刻です。 これらの背景として、技能実習生には原則として実習先の変更が認められないこと、 また、来日する前の事前研修費や渡航に関わる手続き費用等の支払いのため極めて 高額な借金を背負っていることがあります。その結果、問題があっても実習先の 変更や途中帰国という選択肢を取りづらく、不当な待遇にも我慢を強いられる 搾取構造が生み出されているのです。 そのため、国連の自由権規約委員会をはじめとする人権条約関連の各委員会や 特別報告者、また米国国務省による毎年の人身取引報告書でも問題を指摘され、 国際的な批判も続いています。 旗手 明(外国人技能実習生権利ネットワーク運営委員)
Voices of migrant women survivors of domestic violence
Migrant women, in their stories, they expressed their fears, uncertainties and insecurities, with guilt, traumas and discontentment, and to some, their anger towards the unjust relation experienced inside the family set-up.
“My husband always criticized the way I am doing things in the house. His way is right, mine is not, even things like putting soap in the washing machine. When I tried to reason out we ended up fighting and there were times when he strangled and choked me.”
“I am afraid I won’t be able to raise my children without the support of my husband. I don’t know even how to pay the bills. My husband was always saying I couldn’t live in Japan without him. I am afraid of him but also afraid to leave him.”
“During the first years of our marriage my husband wanted to have sex every night. When I refused I felt he might slap me. I was afraid. I thought of divorce. But I hesitated because I know you don’t divorce your husband because of sex. And I was ashamed of facing my neighbors in the Philippines if they found out what happened.”
“I bore the abuse for seven years. I couldn’t leave. My permission to stay has already expired. We have children. He always threatened me, if I left him I will end up being deported to the Philippines and I would not see my children. I don’t want to be separated from my children.”
“I think of killing myself and my children for I couldn’t imagine my children without a father. Mine is a broken family. I don’t like it to happen to my children so I went back to my husband but again the same abuse and control happened.”
“It’s risky but I don’t like to overstay my visa so I went back to my husband. I need the support of my husband for my visa extension.”
Truly it’s doubly difficult for migrant women to start life outside the abusive environment with their children by themselves. The tendency is to bear the abuse. We attribute this first to the internalized negative images fed to them by their abusive spouse. The disempowering images of themselves and life without their husband constantly haunt them. The control still continues even after their escape.
移住女性DV(ドメスティック・バイオレンス)サバイバーたちの叫び
移住女性たちの話は、恐れや疑念、不安、そして罪の意識やトラウマ、不満、そして時に、家族の中で経験した不当な関係性に対する怒りで溢れています。
「私が家ですることに夫はいつも文句を言います。洗濯機への洗剤の入れ方のようなことまで、夫のやり方が正しくて、私のやり方が間違っていると。夫に説明しようとすると喧嘩になって、息ができなくなるまで首を締められたことも何度かありました」
「夫の支えがないと、私一人では子どもたちを育てることができないから不安なんです。公共料金の支払い方も知りません。夫はよく、彼なしでは私は日本で生きていけないと言っていました。夫のことは怖いけれど、夫のもとを離れるのもまた怖いんです」
「結婚当初、夫は毎晩性交渉を求めてきました。拒否したら夫は私をひっぱたくと思うと怖かった。離婚を考えました。でも躊躇したのは、性交渉のことが理由で離婚なんてしないだろうと思ったから。何が起きたかフィリピンの実家の近所に住む人たちが知ったら、会うのが恥ずかしいと思ったんです」
「7年虐待に耐えました。逃げられませんでした。私の在留許可はすでに切れていました。私たちには子どもがいました。夫からは、逃げたら私はフィリピンに強制帰国させられる、そうしたら子どもたちには会えなくなると、いつも脅されていました。子どもたちと別れたくない」
「子どもたちを殺して自分も死ぬことを考えます。父親のいない子どもたちなんて考えられないから。私が育った家庭は崩壊していました。同じことが子どもたちにも起こってほしくなかった。だから夫のもとに戻ったのですが、再び虐待と支配が始まりました」
「危険な決断でしたが、オーバーステイにはなりたくなかったのです。だから夫のところに戻りました。在留許可を延長するために夫のサポートが必要だったからです」
移住女性たちが、虐待を受ける環境を離れて、子どもたちと一緒に生活を始めるのはさらに困難です。彼女たちには、虐待に耐える傾向があります。虐待する夫によって植え付けられたネガティブな自己イメージによるものと考えられますが、無力な自分の、夫なしの生活というイメージに悩まされる、このような支配は夫から逃げ出した後も続くのです。
支援先の国からの叫び
Sri Lanka
- 今回は運が悪かっただけ。そして、また移住労働を求め、旅立つ。過酷な生活の繰り返し。どうにか、生計を立てていくためのいい方法はないものか。
- 移住先では過酷な生活が待ち受けていた。食事が与えられない。契約と違う仕事、給与ももらえない。そんな経験を他の人に繰り返してほしくない。だから、私は今、安全な移住労働のためのコミュニティ活動に関わっている。
- 娘が移住労働先から戻り、傍にいることは、確かに家族の喜びとなる。だけど、村には仕事がない。他に何ができるというのか…。
Myanmar
- 村の中で暮らしても、仕事がない。希望がない。子どもに残せるものがない。外国へ出稼ぎ労働に出た人が大きな家を建てた。素敵だった。私には小さな息子がいる。子どものための将来を求めて、自分も働きに出た。住所もわからない場所で暮らす日々。借金返済が先だ、と言われ、仕事仲介手数料が借金となったことを知らされた。だから、給料は払われない。外出は認められず、外との交流が持てない。契約と違う、と言えば、銃をつきつけられる。そんな時、ラジオからのホットライン情報が流れた。「不当に扱われている移住労働者救済のための直通電話番号」。ここへのアクセスが私の命を救った。そして、今こうやって、私はわが子の近くに居ることができる。
- 移住労働先の生活が素晴らしいわけでない。楽しくもない。だからと言って他に何ができるのか! 村には仕事がない。家族を養っていかないといけない。働かなければ、子どもたちの将来もない。
- テレビで観る華やかな世界に憧れた。紹介してくれた話を真に受けた。ベビーシッターだと信じ、英語の勉強もしたいのでシンガポールへと 渡った。移住労働先では、食事も与えられず、家事の重労働にただただ耐えた。苦しかった。孤独だった。庭先で倒れ、見も知らない人に助けられた。そして、 命を救われた。
四旬節「愛の献金」
今年も2月14日の灰の水曜日から四旬節が始まります。「愛の献金」にご協力よろしくお願い致します。資料は灰の水曜日までに各小教区などにお送りしています。
- 「四旬節2018」小冊子/カレンダー(教皇メッセージ、「愛の献金」趣意書ほか)
- ポスター
- 外国語趣意書(7カ国語 ) ●献金袋 ●組み立て式募金箱
黙想会予定
以下の黙想会は「排除ZEROキャンペーン」をテーマにして行います。お問合せはカリタスジャパンまで。
- 2月18日(日)10:00〜14:00 主催:潮見教会
場所:潮見教会(東京) 指導:イグナシオ・マルティネス神父 - 2月25日(日)11:00〜15:00 主催:スペイン語コミュニティ
場所:市川教会(千葉) 指導:イグナシオ・マルティネス神父 - 3月4日(日)9:00〜14:00 主催:京丹ブロック
場所:西院教会(京都) 指導:イグナシオ・マルティネス神父 - 3月1日(木)19:00〜3月4日(日)8:30 主催:三井楽教会、貝津教会/カリタスジャパン共催
場所:三井楽教会、貝津教会(長崎) 指導:瀬戸高志神父
排除ZEROキャンペーン
〈国籍を越えた取り組み〉大募集!
あなたの教会や学校で、すでに実施していませんか?国際ミサ、インターナショナルデー、食事会、多国籍ボランティアグループでの活動、などなど・・・各地で、日本人と外国籍の人たちが「一緒に」行っている取り組みを教えてください。 報告は、以下の方法で:
- キャンペーンのフェイスブックページに直接投稿 https://www.facebook.com/caritasjapan2017
- ウェブサイトから所定の様式をダウンロードしてメール送信
- カリタスジャパンに所定の様式を請求し、ファックスまたは郵送など。
全国、全世界の皆様からのご報告をお待ちしています!!!
グッズできました! お申込みはカリタスジャパンまで。
- 祈りのカード:本体、送料ともに無料で配布
- ロールシートボールペン:1本200円で頒布、送料実費、お申込みは10本単位でお願いします。(100本以上まとめてお申込みの場合は1本150円)
あなたの町の「カリタスさん」(キャンペーン編)
今回は、多様性あふれるコミュニティ「カトリック足利教会(栃木)」について、オープンハウス(さいたま教区の国際交流センター)のシスター蓮沼玲子さんにご紹介いただきます。
多様性あふれるコミュニティ
足利教会は、日本、フィリピン、ベトナム、スリランカ、ペルー、韓国、中国、カメルーン、ケニア、ウガンダ、インドネシア、ルーマニア、ブラジル…と、たくさんの国の方々が集う教会です。小さい教会なので、主日のミサは一回だけ、毎週違う言語で行われます。日本語、英語、スペイン語、どの言語が主体のミサであっても、一つのミサに皆が参加し、様々な言語を使って一緒に祝います。皆、自分の言葉ではない歌でも歌えるようになってきました!ミサの後には、国籍関係なく皆が交わります。クリスマスや復活祭の持ち寄りパーティーで色とりどりの各国料理が並ぶ様子は圧巻です!第一金曜日に行われている祈りの集いでは、様々な言語でロザリオを唱えます。毎週土曜日には無料日本語クラスを実施し、いつも大盛況です。今年のクリスマスのミサでは、初めてスリランカグループによるシンハラ語の歌が歌われることになり、皆、とても楽しみにしています。(原稿は2017年12月現在)